中学生の週末は案外忙しい。
 悠馬はサッカーのクラブチームの練習があるし、私の方はレッスンはなくても自主練習をしに、大抵はバレエスタジオに通っている。
 だからデートをするといってもお互いの予定を合わせられたのは次の週の日曜日だった。
 午前九時、私はお母さんと一度だけ来たことがあるクリスタルロードの入り口にある大きなモニュメントの前で、悠馬を待っていた。
 これも悠馬からの指令。
 ご近所さんなんだから一緒に行けばいいじゃんって言う私に、それじゃデートの気分にならないだろとか言って。
 デートって…。
 ただ、悠馬と遊ぶだけじゃん。
 でも考えてみれば悠馬と二人だけで遊びに行くなんて初めてだった。
 小学生の時はよく健二と三人で近くの大型スーパーのゲームコーナーへ行ったけど。
 私は少しだけドキドキとして周りを見まわした。
 知ってる人がいないといいなと思いながら。でも今日の私はお気に入りの緑色のワンピース、学校じゃないからメガネは外して頭は高い位置でポニーテールにしている。もしここにクラスメイトがいたとしても、きっと私だってことには気がつかないだろう。
 その時、私の肩をぽんと誰かか叩いた。
 悠馬だった。
「おはよう」
「おはよう」
「待った?」
「え!…ううん。べつにそんなには」
 言いながら私は顔が赤くなってしまうのがわかった。
 今のやりとり、なんだかすごくデートっぽい…。
 そんな私を悠馬は、ニヤニヤとして見た。
「な、なによ?」
「いやべつに。ちゃんと言うとおりにしてきたなって思って」
 これが待ち合わせのことを言っているんじゃないってことに私はすぐに気がついた。
 実は今日のデートで、もう一つ悠馬に言われていたことがあるんだ。
"なるべく、かわいいかっこをしてくること"