だから正確にいうと「今日はダメ」じゃなくて「今日もダメ」なんだ。
 私も行きたいなぁとは思うんだけど、ちょっと事情があって毎日断り続けている。申し訳ないとは思うんだけど…。
「またかぁ」
 さっちゃんは大げさにがっかりして肩を落とす。そして口をタコみたいにとがらせた。
「まったく、なぞが多いなぁ、るりは。部活も入っていないのに、いったい毎日何をしているのやら」
 じろりとにらまれて私はさっちゃんから目をそらす。そしてしょんぼりとうつむいた。
 でもやっぱりそう思うよね。どうしよう。せっかく同じクラスになって気が合って仲良しになったのに、嫌われちゃったかな?と私は急に心配になってしまう。
 だって一緒にショッピングにも行けない友達なんていらないって思われたって仕方がない。
 さっちゃんは、そんな私をじっと見つめてから、にかっと笑った。
「まぁいっか。でもいつか、るりの放課後の秘密を暴いてやるからね!」
「さっちゃん…」
 私は思わず涙ぐんでしまいそうになる。さっちゃんって本当に優しい。いつかさっちゃんになら、私の秘密を打ち明けられる…そんな気がした。
「とにかく日誌やっちゃいなよ!ほら!」
「う、うん」
 私はさっちゃんに急かされて、少し慌てて日誌を書き始める。
 その時。
「るり!」
 ざわざわとうるさい教室によく通る男子の声が響いて、私はぎくりと肩を震わせた。
 一瞬、教室がしーんと静まりかえって、クラスメイトの視線が私に集まった。
 い、嫌な予感…。
 振り返ると、教室の後ろのドアに手をついて下級生の男子が立っている。
 藤城悠馬だ。