小さくて、私の腰のあたりにまとわりついていた小さな男の子は、いつのまに私より背が高くなったんだろう。
　運動神経はもともとよかったけど、太陽の日差しの中でボールを足であやつって、ゴールを目指す悠馬はたしかにカッコいいと思った。
　健二がプロになる姿が頭に浮かぶって言ってたというのもうなずける。
　なんだか私は不思議な気分になった。
　昨夜も一瞬だけ、知らない男の子のように思った瞬間があったけど、こうやって見てみると、知らないところばかりなんじゃない？
「同じクラスの女の子たち、くぎづけじゃん。あの王子様のお迎えを拒否できるなんて、私の友達のるりはやはりただものではないな」
　ちゃかすように言うさっちゃんに、私は頬をふくらませる。
「もう、来ないもん」
　その時、私たちから少し離れた場所の窓際で歓声があがる。
　森さんたちだ。さっきから悠馬のクラスを眺めていたんだ。どうやら悠馬がゴールを決めたようだった。