――...
―「...の、しの、紫乃。」―
誰...?
そんなに呼ばなくても聞こえてる。
『...ん、』
目を開けて、最初に飛び込んで来たのは
途中で記憶が途切れている洋画のエンドロールだった。
あー...
今日の金ロー観たい映画だったのにな。
テーブルに突っ伏したまま眠ってしまったらしい。
疲れてたのかな...
『お風呂入って、ちゃんと寝よう。』
寝て、起きて...
その瞬間、今までのことは夢だったんじゃないか?
なんてことは、随分前から思わなくなった。
だって、夢じゃない。
私は、紛れもない現実の中にいて
歳を重ねて...大人になった。
ねぇ、そこから私が見える?
今もたまらなく会いたい時があるの。
朝から雨が降っている日。
私の好きな紫色の傘を見た日。
あれから、5年以上経って
好きだって言ってたバレー選手がキャプテンになってたよ。
大好きだった漫画もこの前最終回だった。
話したいこと、聞いて欲しいこと
たくさんあるの。
だけど、
待ってるから。
時々は、こうやって
思い出すのを許してね。
