「イト、乾いたよ」



「ありがと…
あのね、リョーちゃ…」



振り向こうとしたら

リョーちゃんに後ろから抱きしめられた



ドクン…



「イト、早くこーしたかった」



耳元でリョーちゃんの声がした



「リョーちゃん、帰って来てくれて
ありがと…」



「イト、会いたかった…」



久しぶりのリョーちゃんのヒザの上



ドク…ドク…ドク…



リョーちゃんの胸の音?

私の胸の音?



背中で混ざり合う



ドキドキするけど

心地いい



「よかった…」



「なにが?」



「リョーちゃんのヒザの上
まだ私の特等席だよね?」



「うん…」



首元にリョーちゃんの吐息がかかった



リョーちゃん笑ってる

よかった



「リョーちゃん、元気だった?」



後ろから抱きしめられたまま話した



「うん、イトは?」



背中でリョーちゃんの声が響く



「うん…どおかな…」



「なに?それ…」



寂しかったって言えないよ



「毎日電話してたのにね…

会ったらやっぱり…」



「やっぱり?」



「好きだな…って思った

会いたかったな…って…」



「…」



背中からリョーちゃんの声が

返ってこなかった



「リョーちゃん?」



私、変なこと言ったかな?

リョーちゃん今どんな顔してる?



もどかしくて

リョーちゃんの方を向いた



ドキン…



リョーちゃんも照れたのがわかった



この感覚

久しぶり



またリョーちゃんに背を向けた

ドキドキして無理だった



「イト…こっち見て…」



前はリョーちゃんにダメって言われた



「…いいの?
だって、ドキドキするし…
だって…」



「うん、イトの顔見たいから…」



ドキン…



ゆっくりリョーちゃんの方を向いた



身体が熱くなった



「イト…」



会いたかった



大好きな人が私の名前を呼んでくれてる



「リョーちゃん…」



大好きな人が目の前にいる



「イト…
離れてわかったけど…

オレ、イトのこと
自分が思ってたよりも…

イトが思ってるよりも…

だいぶ好きかも…

こんなに人を好きになったの初めてだし
これからもない
イトが最後だから…」



リョーちゃんが

見たことないくらい照れてるのがわかった



熱い



きっと私も…



「珠莉ちゃんを好きになった時よりも?」



「うん…
木々羅には悪いけど…
比べ物にならないくらい好きだよ」



「でもリョーちゃん
あの時だいぶ好きだったよね?
珠莉ちゃんのこと」



お兄ちゃんと珠莉ちゃんが付き合っても

お兄ちゃんと珠莉ちゃんが別れても

珠莉ちゃんにフラれても

お兄ちゃんと珠莉ちゃんがまた付き合った時も

ずっと好きだったよね



私は珠莉ちゃんが羨ましくて

ずっと珠莉ちゃんが目標だった



珠莉ちゃんのメイクをマネして

珠莉ちゃんの笑い方もマネしてた時もあった



でも私は珠莉ちゃんにはなれなくて

珠莉ちゃんに似てる私じゃ意味なかった



リョーちゃんは

珠莉ちゃんが大好きだったから



「木々羅のこと、本気で好きだったよ

手に入らないものは、もっと欲しくなる

でもイトは…
手に入れたのに…

もっと欲しくなる」



ドキン…



リョーちゃんが

私の目をしっかり見て言ってくれた



ドキドキして

そらしたいのにそらせない



どーしよ…

また泣きそう



「イト、また泣くの?
泣き虫」



「泣かないよ

もっと好きになる…」



言った瞬間

リョーちゃんにキスされた



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「イト…オレも好きだよ」



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「イト…離したくない」



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泣くのも忘れるくらい

キスしてくれた



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