ロミオは、愛を奏でる。


「リョーちゃん…
足、痛い…」



ホントのことが言えなくて

涙を足のせいにした



「イト、ヒール履いてたもんね
そんな、痛かったんだ」



私の足に

リョーちゃんの手が伸びた



大きくて優しい手



「ここ…?」



「うん…」



リョーちゃん

怒んないの?



こんなことで呼ぶな!

こんなことで泣くな!って

怒らないの?



ーーー



リョーちゃんが私の足に口づけた



ドクン…



リョーちゃんの唇が当たったつま先から

身体が熱くなった



部屋が暗くてよかった

今、きっと私は真っ赤だと思う



ドキドキ…

ドキドキ…

ドキドキ…



聞いたことがないくらい

私の中で胸が鳴った



「痛い?」



ドキドキ…

ドキドキ…


身体中の血液が騒いでるのがわかる


ドキドキ…

ドキドキ…



「んーん…
リョーちゃんが優しいから、痛くない」



ドキドキ…

ドキドキ…



「泣くくらい痛かったの?」



ドキドキ…

ドキドキ…



「うん…」



無理してヒール履いて

大人ぶって

リョーちゃんに追い付きたくて



痛かった

心が



バカみたいって…



「もぉ、大丈夫?」



大丈夫って言ったら

リョーちゃん行っちゃう?



ドキドキ…

ドキドキ…



リョーちゃん行かないでよ

リョーちゃんずっと近くにいてよ



ドキドキ…

ドキドキ…



リョーちゃん

好きだよ



どこにも行き場がない気持ち



忘れられなくて

ずっと辛くて

ずっと痛かった



「リョーちゃん…」



ドキドキ…

ドキドキ…



「ん?」



抱きしめてほしい



今抱きしめられたら

リョーちゃん好き…って

言えるかな?



「リョーちゃん…

ありがと…来てくれて…

もぉ大丈夫
痛くない」



言えなかった



大丈夫じゃないのに

大丈夫って

大人は言うんだよね



「うん…

なら、オレ帰るね

イト、オヤスミ…」



リョーちゃんは

私の足を離して立ち上がった



リョーちゃん

好き



大人になったよ





変なところだけね



言えなくなった

好きだよリョーちゃん!って…



「リョーちゃん

わざわざ来てくれて、ありがと…」



リョーちゃんの背中に言った



「うん…」



バタン…



返事と一緒にドアが閉まる音がした



後ろからリョーちゃんを掴むことも

こわくてできなかった



きっとリョーちゃんは

また振り向いてくれない気がしたから…



必死に止めた涙が

また溢れた