先輩は僕の名前を呼ぶと、ぎゅっと僕を抱き締めた。

「え……」

「……辛いよね。同級生に、あんなことを言われたら……」

「……」

先輩の言葉に、僕は何も言えなくなる。誰かに優しくされるなんて、僕の記憶の中ではあまり無いから……。

「……っ」

誰かに優しくされると、こんなにも心が温かくなるんだね。

視界がぼやけて、僕の頬に温かい何かが伝った。僕から離れた先輩は、僕を見ると一瞬だけ驚いた顔をすると優しく微笑む。

「……思う存分、泣いても良いよ」

僕に、そんなに優しくしないでよ……。

「大丈夫だから」

先輩の言葉に耐えられなくなって、僕は泣き崩れた。



「……落ち着いた?」

保健室にあった長椅子に座った僕の隣に座りながら、先輩は問いかけてくる。

先生は用事があるから、と保健室を出ていって、今は僕と先輩の2人きりだ。

「……すみません」

「大丈夫。それで、何があったの?」

先輩に顔を移すと、先輩は優しく微笑んでいた。僕は話そうかどうか迷ったけど、話すことにした。

「……実は……」

僕は、ゆっくりと話し出す。学校では孤独なこと、小さい頃から両親は喧嘩をしてばかりだったこと、自分の気持ちに気づけないことを。