「実はね……さっき、この子とぶつかったんだけど……何かに怯えてる気がして……」

「え……」

「僕、雰囲気だけで感情を読める時があるんだ」

困ったように、先輩は笑う。

「……そうですか」

僕がそう答えると、先輩は「無理して話す必要はないけど……君は、何に悩んでるの?」と僕を見つめた。

「……」

しばらく沈黙が続く。その沈黙を破ったのは、保健室のドアが開いた音だった。

「……誰かと思えば、いつも1人で可哀想な玲央くんじゃん」

保健室に入って来たのは、いつも僕をバカにするクラスメイトの2人だった。

「……先生、さっき転んでしまいまして……」

クラスメイトの1人は、そう言いながら先生に傷口を見せる。先生に手当てをしてもらった後、クラスメイトは僕を見て笑い始めた。

「……ねぇ、1人でいることって……そんなにおかしいことなの?」

「当たり前じゃないですか、先輩」

「僕は、そうは思わないよ。僕から見たら、1人でいることを笑う君たちがおかしいかな」

そう言ってにこりと笑った先輩の笑顔に、僕はゾッとしてしまう。

「……っ!」

クラスメイトの2人は、無言で保健室を出ていった。

「……玲央」