「ねー、春田さん」
水樹くんはいつものように私を呼んで、今度はむにむに、私の両頬をつまむ。
水樹くん、さては私の頬をおもちゃだと思ってるね?
「春田さんは、好きでもない男と付き合える?」
ぱち、瞬きをした。
水樹くんに両頬をのばされた、きっとまぬけな顔のまま。
「なんでそんなこと、聞くの?」
いやな音がする。心臓から。
「たとえば。たとえばだよ」
「う、ん」
「春田さんはその男のこと好きじゃないけど、でもその男は、春田さんを笑わせる。寂しがらせないし、誰より大事にする。それなら、好きじゃなくても付き合える?」
……水樹くんは、だれの話をしてるの?
だれかを私に、紹介したいんだろうか。


