今、悲しいからじゃない。
あのとき私が悲しかったこと、遠くから見てただけで気づいてくれてたこと。
それがうれしくて。
丸い瞳を半分隠す水樹くんのまぶたを見つめながら、思う。
水樹くんが好き。
「水樹くん」
名前を呼んだら、ん?と水樹くんが顔をあげる。
私を見つめるその顔が、心配そうにゆがんでるから笑顔で言う。
「今、元気になった」
「うそつけ」
「ほんとだよ、信じて」
笑って言ったら、水樹くんはなぜかとても切なそうに笑った。
「俺、春田さんのことはいつも信じてるよ」
ちくん、ちくん、胸が痛む。
水樹くん、うそついて、ごめんね。


