「え?なんで?」


なんで五十嵐先輩?


「昨日、昼休み話してるとこ見かけたから。白川先輩も、いたし」


私の頬をつまんだままの水樹くんがそんなことを言うから、あわてる。


「あの、聞いた!?」

「なにを?」

「話してた、こと」

「……聞いてないよ。遠かったし」


頬から手を離して言う水樹くんに、ほっとして息をついたら。


「俺には言えないような話?」


水樹くんが目を伏せて聞く。

うん、水樹くんにだけは言えない、話。


「ただの世間話だよ」

「悲しい世間話?」

「え……?」

「悲しそうな顔してた」


水樹くんがささやくように言うから、涙がこみあげそうになる。