まじめな顔のまま断定するように言った水樹くんに、私は笑って首を振る。


「元気だよ?全然」

「俺、わかんの。元気ない」


水樹くんは譲らずに言って、自分の椅子を動かし座りなおす。

私の隣から、私の正面へと。


手をまっすぐ少しだけ伸ばせば、触れられる距離。

そして水樹くんは、手をまっすぐ少し伸ばして私の頬に触れる。


ふに、と左頬をつまんで水樹くんは言った。


「笑って、春田さん」

「笑ってるよ?」

「笑ってないから言ってる」

「笑ってるよお」

「五十嵐先輩となんかあった?」


水樹くんがまた脈絡のないことを言いだすから、私は目を丸くした。