体が硬直する。
心臓は破裂しそうなほどふくらんで、大きな音をたててる。
……水樹くんが、私に、話しかけてる。
どうしようどうしよう、逃げたほうがいい?
だって私、今、ただのストーカー……。
違う!ストーカーじゃない!
今日だけ、今日だけって決めて、ここまで来たんだ。
「……怒んないからこっちおいで」
いつまでたっても答えない私に、水樹くんは言う。
罪悪感と緊張、混乱、それらすべてを凌駕するよろこびに体を支配されて、震える手でドアに手をかける。
は、と思い出して、左手に持っていた小箱をブレザーのポケットにしまった。


