立ち入り禁止の屋上でなぞの椅子に座ってる彼を、私は数センチ開けたドアの隙間から見つめていた。
ひらたく言えば、校舎裏の茂みからこっそりあとをつけてきたのだ。
水樹くんはまぶしそうに瞳を細めて、もの憂げに秋晴れの空を見あげる。
その横顔にまた胸が痛くなって、ぎゅ、とクッキー入りの小箱の握ったとき。
「そこの人、いつまで隠れてんの?」
ドアの向こうから、声が聞こえた。
高いとも低いともつかない、さらさらと流れる川のように淀みない、その声は。
まぎれもなく、彼、水樹くんの声。
私は目を丸くして、息を止める。
……まさかまさかまさか、私に言ってるんだろうか。
「きみに言ってんだけど」
水樹くんは空を見あげたまま、私の心の声に答えるように言った。


