おしつぶされそうに苦しい胸をおさえて、ひざに顔をうずめたとき。
勢いよくドアの開く音がして、肩が揺れた。
「春田さん、ごめ、足止めくらって……」
聞こえてきた水樹くんの声は、荒い呼吸で乱れている。
そんなに急いで来てくれなくたって、私はずっとここにいるのにな。ずっとずっと。
泣けない涙で胸がふやけそうになりながら顔をあげたら、きれいな顔を苦しそうにゆがめてる水樹くんと目があった。
走ってきてくれたの？
ありがとう。
どんな顔をしたらいいかわからないまま、なんとか微笑んで、
「おかえりなさい」
こぼれる言葉をそのまま口にしたら、私の前にしゃがみこんだ水樹くんが。
「抱きしめていい？」
真顔でそんなことを言うから、思わず笑ってしまった。
