「怒ってる?」
「お、怒ってないよ」
「じゃーなんで全然俺のこと見ないの」
「見てるよ!?」
「見てないし。朝、廊下でも目そらしたし」
それは恥ずかしいのと混乱とで……。
「ほ、本当に怒ってないから!」
顔をあげて思わず大きな声で言うと、周囲の視線が一気に私たちに集まるから、またうつむいてしまった。
見られてるよ、王子さま。
心のなかでつぶやく。
でも水樹くんは、見られてることなんて気にもとめずに言う。
「今日天気予報、晴れのち曇りだけど」
「……うん」
「こういう日は屋上どうすんの」
「水樹くん、みんなに聞こえる」
「俺は会いたいけどどうすんの」
鼓動が体をのっとる。鼓膜がぐわんぐわんする。


