「……じゃあ純粋に、風香のこと好きになったとか?」
「それは絶対にない」
だって、水樹くんは平然と言ったもん。
『春田さん俺のこと好きじゃないし、ちょうどいいよ』
『……春田さんは、俺のこと好きじゃないから変な期待とかしないし、学級崩壊も起こさないし』
普通、好きな女の子にそんなこと言えない。
胸がちくんちくん痛む。
「絶対ない、なんて言いきれないでしょ?あんた地味にモテるし」
麗ちゃんがそう言ったとき、廊下のほうが急にさわがしくなった。
なにごと?なんて見なくてもわかる、毎日のことだ。
水樹くんと彼の友達が移動するってだけで、廊下は束の間、花道になってしまうのだ。
黄色い声がだんだん遠ざかっていくことで、水樹くんがこの教室を通過したんだとわかる。