今朝の廊下で一度だけ、いつものごとく大勢の人に囲まれて廊下を歩く水樹くんとすれ違ったけど。
とても、顔なんて見られなかった。
「まあ、王子さまも所詮ただの男だったってことかな」
「どういうこと?」
「大抵の男は、自分を好きな女にはなにしたって許されると思ってるってこと」
私は首を振る。
「水樹くんは私の気持ちなんて知らないし、そんな人じゃないよ」
「言いきれんの?」
「言いきれる」
だって。
もう泣かせないようにって、関わった女の子の名前全部覚えようとする人だよ。
争いが起きないようにって、1日中プレゼントもらい続けちゃうような人だよ。
それを優しさだって、自分で気づいてないような人だよ。