水樹くん、だめだよ。
「きれいも、だめ」
「なんで」
「かわいいと一緒」
水樹くんのこと好きじゃないってことにして、水樹くんの隣にいる水樹くんのこと好きな私なんかに、そんなこと言っちゃだめだよ。
「春田さんはさー。今も恋、してんの」
私の髪先をもてあそびながら、残酷な水樹くんはそんなことを聞く。
してるよ。水樹くんに。
そう言えない言葉を、胸におしこんで微笑んで、
「うん」
うなずいた。
「……優しくなれる恋ってやつ?」
「うん」
きっと。きっとね。
「じゃーなんで寂しそうなの」
水樹くんはなぜか憤るように言って、髪先に触れていた手で少し乱暴に私の頬をつかむ。
それからほとんど間をおかず、私の唇をふさいだ。