「んー?」
まだ双眼鏡で五十嵐先輩を見てる水樹くんの横顔を見つめて、私は言った。
「好きじゃない子にかわいいって言っちゃだめなのは、無駄な期待持たせちゃうからでも、学級崩壊が起こりかねないからでもないよ」
ようやく五十嵐先輩を見るのをやめた水樹くんが、まじめな顔で私を見つめる。
水樹くんの前髪が、風に少しだけ揺れている。
ただそれだけの光景があんまりきれいで、泣きたくなった。
「水樹くんが、いつか出会うたったひとりの好きな女の子のために、言うための言葉だからだよ」
だれかを傷つけないため、じゃない。
水樹くんの、恋のため。
「水樹くんとその子のための、言葉にするべきだからだよ」


