水樹くんは双眼鏡で、なぜか白川先輩じゃなく五十嵐先輩を執拗に見ながらつぶやく。
私もそっとグラウンドに目を落とせば、ふたりは幸せそうに寄りそってる。
双眼鏡がないから表情はわからないけど、何度も見たふたりの笑顔が目に浮かんだ。
……あのふたりがあこがれの的なのは、なにも美男美女だからってだけじゃない。
本当にお互いのことが大好きなんだなって、見てるだけでわかるからだ。
お互いがお互いにとって、たったひとりの好きな人なんだなって、わかるから。
幸せな恋って、きっとこういうものなんだなって、思えるから。
ああ、わかった。さっきの違和感のわけ。
「……水樹くん」
名前を呼ぶだけで、胸が縮むような感覚。
水樹くんは私にとって、たったひとりの好きな人だ。


