「からかわないでくれないかなあ!?」
「からかってないよ、かわいいなと思っただけ」
こともなげに言われて、う、と泣きたくなる。
よろこんじゃだめだ、なんの意図もない。
これは水樹くんの、ナチュラルたらし癖だ……!
その証拠に水樹くんは双眼鏡で、のんきに遠くの景色を見てる。
「水樹くん」
真っ赤な顔に眉をよせて、私は言った。
「はーい」
ゆるい声で返事をした水樹くんが、双眼鏡をまた私に向けるから、ぽいと片手で奪う。
「そういうのは好きな子にしか言っちゃだめだよ」
「あ、おべんきょーですか先輩」
澄んだまん丸の瞳は細めず、唇の端を少しだけあげて笑う。
それは水樹くんがよく見せてくれる笑顔で、見るたび私の心臓はよろこびだしてしまう。


