『冗談。会うだけでいいよ』

『あの、役不足じゃないですかね?』


聞くと水樹くんは少し黙り、私の頬をむにむにするのをやめて。


『春田さん俺のこと好きじゃないし、ちょうどいいよ』


そんなことを言うから、胸が千切れそうだった。


『俺のこと好きな子には頼めないし』


そうだった。

私は今日、たまたま好奇心でここに来ただけなんだ。

そういうことに、自分でしちゃったんだ。


現状に打ちのめされている私をよそに、水樹くんは言う。


『あとなんか、春田さんと会うだけで勉強できる気するしね』




ああ、水樹くんは本当に恋をしたことがないんだ。

そう思った。