『俺に恋、教えてよ。春田さん』
私の頬に手をそえて、瞳を射抜くように見つめて、水樹くんは言った。
すぐに首を横に振るべきだったと思う。
だって、ろくに男の子と付き合ったこともない。
ただ水樹くんを好きなだけの私が、水樹くんに恋を教えるなんてできるはずがない。
それなのに。
こくり、うなずいてしまった。
『……でも、教えるって?』
『んー。ときどき、ここで会お』
水樹くんは思案するような顔をしながら言って、なぜか両手で私の頬をむに、とつまんだ。
水樹くんと違っていい顔じゃないんだから、うう、ブスになる……。
『会う、だけでいいの?』
『手取り足取り教えてくれんの?』
頬をつままれたまま首を横にぶんぶん振ると、水樹くんが少し笑うから。
うれしい、と胸が鳴る。
パブロフの犬か、私は。