ああ。
こんなにも確かな気持ちなのに、なんで上手に言葉にできないんだろう。
悔しい。
そう思っていたら、隣の水樹くんが、ふ、と笑った気配があって。
「優しく、で間違ってないんじゃない」
穏やかな声で言ってくれるから、鼻の先がじんわり痛くなる。
伝わった、んだろうか。
「恋したことないから知らないけど」
水樹くんが付け足して言うから、ふふふ、笑ってしまった。
「あー先輩、俺のことばかにしてます?」
「してないしてない!」
笑いながら思う。
水樹くんは、なにもかも完璧な王子さまなんかじゃない。
たぶんただただ、優しい王子さま。
それは、テレビのなかの王子さまがこれ見よがしに与えるような、そういう優しさじゃなくて。
ひとりの男の子としての、まっすぐな優しさだ。


