泣きだしそうな気持ちを叱って、うん、私はうなずく。

きちんと答えたい、そう思ったから。


水樹くんは恋を知らないから、だからきっと、告白されたってなにをされたって寂しいんだ。


恋は人の胸にただあるだけで、あたたかいものなのに。


水樹くんはそれを知らないから、だから、気持ちに応えられない、傷つけてしまう、それだけしか水樹くんのなかに残らなくて寂しいんだ。

それが私は、いやだったんだ。


声が震えないように祈りながら、口を開く。

恋は。


「……人を、優しくさせるもの」

「優しく?」

「うん。たとえば。……たとえば、だよ?」

「ん」


「その人が寂しそうにしてたら、笑わせてあげたいなあって思うの。寂しそうにしてる理由がなにか、なんて、関係ないの。ただ笑わせてあげたいなあって思うの」


「……なんで?」


問いかける水樹くんの瞳があんまりまっすぐで、胸が震えてしまう。


そんなの、なんで、なんて。


「笑顔が、見たいから」

「それだけ?」


顔をしかめて聞かれるから、微笑んでうなずいて言う。


「……そういう、わがまま」

「わがまま」


復唱されて、あ、と気づく。


「あれ、優しく、じゃないね?ごめん」