ねえ、水樹くん。


坂上さんの世界の終わりも、中2のときの学級崩壊も、水樹くんのせいじゃないよ。

告白した女の子が泣くのも、走り去るのも、水樹くんのせいじゃない。


そのことを、この人はちゃんと理解してるんだろうか。


……きっとしてない。


してないから、女の子の名前を全部覚えようとしたり、プレゼントを律儀に全部もらったりするんだ。


坂上さんの話も学級崩壊の話も、私にはさらっと話してくれたけど。

でもきっと本当は責任を感じて、そのたび立ちつくして、胸を痛めてる。


……そんなこと続けてたら、水樹くんの心がもたない。




「春田さんにとって、恋ってどんなの?」


なにも言えずにいる私に、水樹くんは前を向いたまま聞いた。