そんなことをぼんやり考えながら、私は茂みのなかにしゃがみこみ、草木の向こうの彼をただ見つめてた。


女の子に走り去られた彼は、ひとりきりで立ちつくしてる。


吹奏楽部のトランペットのちょっと外れた音までもが、彼のためのBGMになってしまう。


私はきゅ、と唇をむすぶ。


立ちつくす彼の横顔が、いつもどうしようもなく寂しそうなこと。

それを見るたび、私の胸が痛むこと。

全部、彼を好きになって知ったことだった。





願いはひとつだけ。

笑って、王子さま。