「はい、いい子」
恥ずかしげもなく言う水樹くんの声に、ぎゅ、と目を閉じた瞬間。
ほろほろと甘いクッキーが、口のなかに入った。
……うう、やってしまった。
クッキーを作ったあの女の子への申し訳なさもあいまって、涙がでそうになる。
あまい、おいしい、つらい。
悲劇のクッキーをもぐもぐしながらいろんな感情に耐えてる私の横顔を見てた水樹くんは、呆れたように言う。
「素直にくださいって言えばいいのに」
ほしくないんだってば……!
でもそんなこと言えないから、ごくん、飲みこんで別の言葉を口にした。
「こういうの、全部食べてるの?」
「まさか。おなか壊すわ」
総量すごいよ、と水樹くんは言う。
知ってるよ。
「じゃあ、食べきれないぶんは?」
「兄貴が食う」


