それなのに水樹くんは、呆れ顔でため息をついて言う。
「おなか鳴らしてたくせに」
「そういうのは言わないで!?」
「あ、まさか照れてんの」
「照れてません!?全然!?」
「じゃー口開けて」
新しくつまんたクッキーを口元に差しだされるから、一瞬、心臓が飛びでたかと思った。
水樹くんって、水樹くんって、ナチュラルたらし王子なんだ……!
うそだ、ああ、こんな日がくるなんて。
水樹くんに、ほかの女の子が水樹くんのために作ったクッキーで、あーんされる日がくるなんて。
なんたる、悲劇……。
そう思いながらも、私はおずおずと口を開いてしまう。
笑いたかったら全人類、笑ってくれていい。
たとえどんな理由があったって、水樹くんにこんなことをされて拒否できるはずがないんだ。


