クッキー入りの小箱を握りしめて私は、
「……気持ちはうれしいけど、ごめん」
もう何度目のことだろう、彼のその言葉を聞いた。
「プレゼントだけでももらってくれる?」
今にも泣きだしそうな女の子の言葉に、彼がうなずいて小さな袋を受けとると、女の子は彼に背を向け走り去ってく。
女の子とは、恋に破れるとその場から全力で走り去る、そういう生き物である。
……ってことを、私は彼を好きになってから知った。
彼は右手に持った、淡いピンク色の小袋を眺めてる。
それはきっと、C組の教室のロッカーの上の、プレゼントの山の一角になる。
ありとあらゆる女の子たちからの、彼への誕生日プレゼントでできあがった山。あざやかな色とりどりの山。
でも、そろそろ重みに耐えられずに、くずれちゃうかもしれないなあ。