私のなにかが水樹くんの印象に残った、なんて奇跡があったのかな。
そんな淡い期待は。
「俺、1回聞いた女子の名前、忘れないから」
こともなげに言われて、あっさりはじけ飛んだ。
「それはなんていうか、すごいね」
ショックをうけてるのがばれないように、とりつくろって言うと。
「女子にとって名前覚えてもらえないことって、世界の終わりに匹敵するんでしょ?」
水樹くんは言って、うかがうようにちらりと横目で私を見た。
ちょっと意味がわからない。
「そんなことだれに教わったの?」
「小5のときに告白してきた坂上さん。名前知らないって言ったら、1年のとき同じクラスだったのに覚えてくれてないなんて世界の終わりだって、1時間泣かれた」
なるほど、ありありと想像できた。


