「……ありがとう」
泣きだしそうな気持ちをこらえて、水樹くんの横に座った。
いつも教室で使っている椅子と同じなのに、水樹くんと並んで座るこの椅子は、私のなかでどこまでも特別だ。
それは、水樹くんが王子さまだからじゃない。
彼が私の、好きな人だからだ。
たったひとりの、好きな人だから。
でもせっかく休んでたのに、私がいて邪魔じゃないかな。
そっと祈るように盗み見たきれいな横顔は、ゆるやかな風をうけて気持ちよさそうに目を細めていた。
心臓が、とくんとくん、と音をたて続ける。
「園芸委員で一緒だったなんて、よく覚えてたね?」
まともに話したことがないうえに、彼の前で声を発したのは一度だけだ。
去年の最初の委員会で、ひとりずつ自己紹介をしたときだけ。
それは間違いない。


