泣く人、笑う人、男女ともども、たくさん。
結局ローファーは見つからなくて、上履きともども買いかえるはめになったけど。
放送のおかげか、私につきっきりで警戒モードに入る水樹くんのおかげか、もう私が女の子たちからいやがらせをうけることはなかった。
新聞部がだした号外の見出しは、
【 王子さま 溺愛発覚 】
ふざけてるけどインパクト大の言葉で、誰があんなの考えたんだろうねって、照れながら言ったら、
『俺がこう書いてねって新聞部に直訴したんだよ』
水樹くんがけろっとそんなことを言うから、ちょっと怒ったけど。
あの号外のおかげで、水樹くんのファンの子たちは少しずつ私を認知してくれるようになったから。
王子さまなりのエスコートだったのかもしれないな、と今になっては思う。
もちろんだからって、みんながみんな水樹くんをすんなり諦められるわけじゃない。
恋ってそんなに簡単じゃないって、私も水樹くんも、わかってる。
水樹くんは彼女たちからの告白のひとつひとつを今までどおり丁寧に断って、だけどもうだれからのプレゼントも受けとらなかった。
王子さまは二度と、ひとりきりで立ちつくしたりしない。
笑ってまっすぐ、ここへ帰ってきてくれるから。