放送室の窓の外、とっくに雨はあがって曇り空に光がさしていた。
でも私たちがそれに気づくのは、手を繋いで歩く夕暮れの帰り道のこと。
ふたりのすれ違いの、答え合わせをしながらゆっくり歩く帰り道のこと。
次の日、昨日の雨が嘘みたいに空は晴れたけど、私と水樹くんはそれぞれきちんと風邪をひいて、ふたりして学校を休んだ。
<クッキーおいしかったよ>
熱にうなされてベッドで寝てたら、水樹くんからそんなメッセージが届く。
<食べちゃだめだよって言ったのに>
<食べちゃだめって言われて食べないバカがいるかな>
<言ってる意味、よくわかんない>
<また作ってください>
<それよりおなか壊しませんでしたか>
<正直、ちょっと壊しました>
水樹くんは、王子さまだけど王子さまじゃなくて、だけどやっぱり王子さまだね。
<俺のおなかを壊せるのは春田さんだけですね>