――ごめん。俺がバカでした、間違ってました。
ほんとだよ、バカ。
止まってた涙がまたにじんで、頬から落ちて首筋をつたって、胸まで届く。
いちばん熱いところに届く。
――怒っていいから。
――王子じゃなくて、春田さんだけの男になるから。
丸椅子から立ちあがって、保健室を飛びだした。
頭から、タオルが舞って落ちる。
――俺のとこ、帰ってきて。
帰るって言っても、水樹くん。
知ってる?私たち今、目と鼻の先にいるんだよ。
放送室は、保健室のななめ前。
バンッ、ドアを開けたら。
――雨ですが、待ってます。
かがんでマイクに向かってる、びしょ濡れの水樹くんがいた。


