学校イチのモテ王子は、恋を知りたい



行かなくちゃ。

心のなかで自分に言う。

ここから立ち去らなくちゃ。



多くの女の子と同じように、私にとっても今日はXデーだった。

ブレザーのポケットには、おろかなうそで出番をなくしたクッキーの小箱が入ってる。


……でもきっと、うそなんかつかなくても渡せなかった。


私にはできない。


さっき校舎裏で見た、今までに何度も見た、立ちつくす水樹くんの寂しげな横顔。


彼に告白すれば、私もほかの女の子たちのようにほぼ100%ふられる。


『……気持ちはうれしいけど、ごめん』


その言葉を、正面から聞くことになる。

まともに話したこともないんだ、悲しいけどそれは仕方ない。