泣かせないように、傷つけないように、そればっかり考えてきた人生で、生まれてはじめて、そう思ったんだよ。
バン、と開けたのは教室のドアでも屋上のドアでもなくて、放送室のドアだ。
おやつを食べながらテーブルで談笑してた、丸眼鏡の男子と同じく丸眼鏡の女子が動きを止めて俺を見る。
「え、王子さま……?」
「え、なんで?」
「あんたなんか王子さまと約束してたわけ?」
「するわけねーだろ、なんで俺が王子と約束すんだよ」
「じゃあなんで王子さま来たんよ」
「知らねーって」
マイペースに混乱して、マイペースに話し続けるおそらく放送部のふたりに、息を整えながら聞く。


