「去年、風香、すっごい怒ってたんだよ」
「……なにに?」
聞くと、白川先輩は微笑んで俺の隣にしゃがみ、花壇を眺めて言った。
「あたしらが部活してるとき、風香がひとりでここでなんかしてんの見えたから、どしたのって聞いたのね」
「はい」
「そしたらあの子、びーびー泣いてお花植えてたの」
「……え?」
「どうしたの?って聞いたら、水樹くんのお花がだれかに持ってかれたって」
俺は目を見開いた。
そう、俺の花は、だれかに持っていかれた。
「水樹くんが一生懸命植えたものに、どうしてそんなことできるんだろう。こんなの見たら、水樹くんが悲しむ、きっときれいに咲くはずだったのにって」
きっと、きれいに。咲くはずだったのに。


