奪うばっかりだよ恋なんて。
根こそぎ抜かれた花を見て、俺はそう思ってたんだ。
これまでずっと、そう思ってたんだ。
それなのに。
『……人を、優しくするもの』
誕生日、くたくたに疲れた俺の前に、彼女は突然現れた。
俺のことを好きでもないのに、屋上までつけてきたらしい変な女の子はそう言った。
『その人が寂しそうにしてたら、笑わせてあげたいなあって思うの。寂しそうにしてる理由がなにか、なんて、関係ないの。ただ笑わせてあげたいなあって思うの』
なんで?って聞いたら。
『笑顔が、見たいから』
切なそうに笑って、言った。
心臓が熱くなって苦しくなって、あのとき俺は、俺は。
彼女を抱きしめたかった。


