校舎裏にも中庭にも裏庭にも、春田さんはいない。
まさか、靴も履かずに帰った?
そんなんだめだ、怪我する危ない。
走りながら電話をかけるけど、でない。
あーくそ、なんですぐ背負って家まで送ろうとしなかったんだよ俺。
肩で息をしながら、びしょびしょになりながら、昇降口の前で膝を折ったら。
色とりどりの花が植わる大きな花壇のなかに、うち捨てられている上履きを見つけた。
雨に濡れながら、歩みよって、しゃがんで、拾う。
泥にまみれ、雨に濡れたその上履きには、『春田』ときちんと書いてある。
……結局、結局こうなるんだよな。
犠牲に、なるんだよな。


