鞄から小箱を取りだして、振り返って、水樹くんに投げつける。
それは見事に、水樹くんのおでこにジャストミートしてから地面に落ちた。
「なに、これ」
水樹くんが拾いあげて、聞く。
「水樹くんのこと好きな私が、水樹くんの誕生日に作ったクッキー」
一生懸命作ったけど、渡せなくてあの日、ブレザーのポケットに隠した。
水樹くんのお兄ちゃんに、食べられる予定だったクッキー。
「……水樹くんは、恋のこと、なんにもわかってない」
私は、階段を駆けおりた。
ほかの女の子と同じ。
結局、水樹くんをひとりぼっちにして。
なにが悲しくてなにが悔しいのか、頭がぐちゃぐちゃで、涙が止まらなかった。