すごく身勝手な言い分だ。
なんて、わがまま。
涙をぬぐわずに立ちあがる。
「……水樹くん、私、水樹くんに教えなかったこと、ある」
片膝をついたまま私を見あげてる水樹くんの顔が、よく見えない。
「恋は人を優しくするだけじゃないよ」
今、どんな顔で私のこと見てる?
「人を意地悪にしたり傷つけたりする」
私、今、どんな顔してる?
「ぐちゃぐちゃに乱して、悲しくさせる。うそだってつかせる」
階段に向かって歩きだしたら。
「春田さん待って」
水樹くんが強く、私を呼ぶけど。
「待ちたくない」
わからずやの水樹くんの言葉なんて、聞きたくない。


