水樹くんが、いっぷく、って言った……。
ただそれだけのことに、胸がきゅんとなる。
いっぷく、というワードだけでこんなに胸にきちゃうなんて、恋は不思議だ。
「お疲れ、ですか」
「どっからどう見てもお疲れ」
水樹くんは、王子さまらしからぬことを率直に言う。
やさぐれぎみ?
「疲れてるけど疲れてますとは言えないから、ここでいっぷく」
なるほど。それは、さすが王子さまだ。
「今、さすが王子って思った?」
「……ごめんなさい、思いました」
読心術……?
「別に謝んなくてもいいけど」
普段は聞けないような、ゆるい声で言われた。
「ねー、俺ってそんな王子?」
水樹くんは、そのまっすぐな瞳で私を見つめて聞く。
彼に恋をしてる私にとって、それは難しい質問だった。


