「……春田さん、好きじゃない男に、こんなことしていいの」
「水樹くん」
「……ん」
「私の言葉、信じて」
「うん」
「よく聞いてね」
はじめて屋上で会った日、本当の水樹くんを知った日。
言えなかったこと。
「水樹くんは、悪くない」
「……、」
「いつだってずっと、なにひとつ悪くないんだよ」
強く言った。
坂上さんの世界の終りも、学級崩壊も、ほかにもきっと、私が知らないだけできっともっとたくさんあった悲しいこと、だれかを悲しませたこと。
女の子が水樹くんの前から走り去るのも、私の靴が捨てられちゃったのだって、全部。
水樹くんのせいなんかじゃ、ないんだよ。


