薄暗いそこで、ドアにもたれてしゃがんでる水樹くんが顔をあげる。 「水樹くん」 うれしくて笑ったら、水樹くんはおどろいた顔で私を見た。 「春田さん、どしたのそれ」 水樹くん、そんなことどうでもいいの。 どうってことないの。 はあはあ上下する息を整えながら首を横に振ると、立ちあがった水樹くんが私の両肩をつかんで険しい顔で聞く。 「靴、なんで履いてないの?」 「違うの水樹くん」 「違うってなにが?」 そんな顔、させたいんじゃないの。 私はまた首を横に振る。 だめだ、じょうずに言葉がでない。