「ほんとたまたま、好奇心で!」
こんなに真っ赤なうそをついたのは、人生ではじめてかもしれない。
水樹くんはしばらく疑いの眼を私に向けていたけど。
「……ま、手ぶらっぽい信じるか」
私が手にプレゼントらしきものを持っていないのを確認して、言った。
「あの、ここ立ち入り禁止なのにいいの?」
「だめだよ、早く出てったほうがいいよ」
「うん、でも水樹くんは?」
「俺はもうちょい」
「あの、ここでなにしてるの?」
「意外とぐいぐいくんね」
涼しい流し目で言われて、かちんと固まる。
しまった、調子にのってしまった……。
すると水樹くんは、椅子に座ったままふ、と可笑しそうに少しだけ口角をあげて。
「……いっぷく」
つぶやくように言った。


