「な、んで私の話になるの……!?」
今は、水樹くんの話をしてたのに。
「なんでだと思う?」
「そんなの、わかんない……」
わかるわけない。
水樹くんは言うこともすることも、めちゃくちゃだもん。
わかるわけないよ。
「……わかんないなら、もういい」
水樹くんは低い声で言って、私から離れた。
熱だけ、私の体の奥の奥に残して。
「……俺、そろそろ帰んね。ジャージ探さなきゃだし」
振り返ると、水樹くんはもうドアに手をかけている。
「ジャージ?」
「盗まれたの。まーいつものことだけど」
水樹くんの声は明るい。
「王子のジャージは高値で取引されるらしいよ」
でも、どうして。
いつもまっすぐ私を見るのに。
水樹くんは一度も振り返らずにそのまま、屋上から出ていってしまった。


