「春田さんの理論からいけばだめじゃん」
「でも、好きなれる可能性は、ゼロじゃない、し」
「自分は付き合えないくせに」
「わ、私と水樹くんは、違うから」
「春田さん、まじめに。本当にいいの?」
いやだよ。
あまりにきれいな瞳でまっすぐ私を見つめる水樹くんに、顔向けできなくて背を向ける。
見おろせば、校庭の花壇が見えた。
園芸委員が植えた花。
去年の花は、もう枯れちゃったけど。
フェンスをぎゅ、と握る。
すう、と息を吸ったらもうすぐそこまできてる冬のにおいが、体を満たした。
「いいとか、だめとかじゃなくて、いや」
視線をあげて、できるだけ遠くを見て、声を張って言う。
「水樹くんが心から好きになった人じゃないと、いや」


