さらさらの前髪から見え隠れするきれいな眉を、苦しそうによせて、でもすぐに笑って、ぱ、と私から手を離す。
……またキス、されるかと思った。
どくんどくん、と鳴る心臓に耐えられなくて、すくっと立ちあがる。
フェンスまで、よたよたと歩く。
心臓がもたない。
感情がめちゃくちゃだ。
「ねー、春田さん」
後ろから声をかけてくる水樹くんに、
「な、に?」
振り返らずに歩きながら返事をする。
「俺、昨日桃井さんって子に告られたんだけど」
「うん、噂になってる」
「1年生で、俺みたいにモテるらしいよ。すごいよね」
「……じ、自分で言うかなあ」
端まで辿りついて、ぎゅ、とフェンスを握ったら。


